2026年1月、起業家やこれからエンジェル投資を始めたい方に向けて、「起業家が知るべき資金調達の基本と実務」と題した投資経験者の対談セッションを開催しました。
資金調達は事業成長の鍵を握る一方で、その実務や投資家の本音は「ブラックボックス」になりがちです。大和企業投資の元代表取締役社長であり、金融・投資の最前線で40年のキャリアを持つ平野清久氏と、Ex-VC・Ex-コンサルとして数多くのスタートアップ戦略支援を行う中山悠里氏が登壇。
現場のリアルな事例をもとに、明日からの実務に活きる知見の後編をお届けします!
登壇者
1987年より2004年まで大和証券グループにて証券アナリストとして小型成長企業の調査に従事。数多くのIPO企業、上場企業の調査を行い、各種証券アナリストランキングでは10年以上にわたり上位にランクされる。2004年より同証券グループの投資銀行部門にて引き続き小型成長企業を担当し、IPO準備企業のサポート、当時のマザーズ・JASDAQ等上場企業の財務活動の支援を行う。2010年大和クオンタムキャピタル代表取締役社長に就任。アジア圏にてグロース投資を行うファンドの運営に関わる。2014年から大和企業投資にて国内ベンチャー企業への投資を担当。2020年同社代表取締役社長に就任。2024年3月まで4年間社長として同社経営に携わる。
大学在学中にベンチャー企業の創業メンバーとして立ち上げに参画後、Boston Consulting Groupにてコンサルティング業務に従事。その後、GREE Ventures(現STRIVE)や楽天キャピタルにてキャピタリストとして従事。AntlerではDirectorとしてプログラム運営からメンタリングまで全てを統括。2023年4月より独立系VCのアニマルスピリッツDirector。現在は独立し、スタートアップのファイナンス/コーポレート/戦略立案などの伴走支援を中心に活動中。
投資家が最後に見るのは「仲間を集める能力」
中山 悠里氏(以下、中山氏):持分比率のお話、非常に具体的で勉強になります。平野さんの40年のキャリアの中で、「この創業ストーリーは素晴らしかった」という実例があれば教えて下さい。
平野 清久氏(以下、平野氏):究極的には「チームを作る能力」に尽きます。今は一人で始めていてもいい。でも、投資家は「将来的にこいつは優秀な仲間を集める能力があるか」という人間力を見ているんです。
例えば楽天の三木谷さん。彼はすごかった。創業時から、奥様や興銀時代の仲間をガッチリ巻き込んで事業計画を作ったり、証券会社や銀行の優秀な担当者を次々と引き抜いたりしていました(笑)。そのエネルギーこそが事業計画書よりも重要なんです。
サイバーエージェントの藤田さんもそう。ITバブルが崩壊した時も、上場して手に入れた資金を無駄に使わず、しっかりと握りしめていた。そのお金があったから、後のゲーム事業やAbemaTVへの投資ができた。ビジネスモデルは時代とともに変わりますが、優秀な仲間が集まるチームは、環境の変化に対応して最後には成功するんです。
仲間割れを防ぐ「創業株主間契約」の重要性
中山氏:チーム組成能力が重要である一方、SOや株のインセンティブはどのように考えていくと良いでしょうか。
平野氏:複数人でチームを組むなら、初期に必ず「創業株主間契約」を巻いておくこと。誰かが辞めた時に、持っている株をどう買い戻すかを決めておく必要があります。
また、比率も「1/3ずつ均等」が正解とは限りません。投資家から見て「この人に辞めてほしくないから、もっと株を持たせろ」とアドバイスすることもあります。役割の重要性や貢献度を反映させることが大切です。
VCマネーから出資を受けることが「成功」ではない
中山氏:資金調達というとVCばかりに目が向きがちですが、黒字企業の融資実行のスピードには驚かされます。平野さんはどう思われますか?
平野氏:その通りです。少しでも黒字なら、銀行融資が一番効率的だったりします。今、日本の銀行は「スタートアップへの融資実績」を強く求めています。
中山氏:そうなんです! 私が支援している先でも、VCなら2-3ヶ月かかるDD(デューデリジェンス)が、銀行融資なら数週間で数千万実行された事例がありました。
平野氏:まずは助成金をフル活用し、回るようになったら融資を受ける。どうしても赤字を掘ってでも世界を取りたいという時に初めて、VCを考える。VCからお金をもらうのが成功ではありません。自己資金で道を切り開くことだって立派な戦略です。
エンジェル投資家を目指す方、そして起業家へ
中山氏:最後に、会場の皆様へメッセージをお願いします。
平野氏:エンジェルを目指す方は、まず「100人の起業家に会う」こと。それだけ会えば、筋の良し悪しが分かるようになります。
そして起業家のみなさん。外部資本を入れることは、誰かを自分のバスに乗せることです。一度乗せたら、簡単には降りてもらえない。私は投資をするとき「もしダメで自分がクビになっても、後悔しないと思えるか?」と考えていました。それくらいの覚悟が双方に必要です。資金調達はあくまで手段。夢を実現するために、何が最適かを選び抜いてください。
中山氏:平野さん、本当にありがとうございました!
以上、後編では、起業家の人間力や、VCマネーに依存しない「融資・助成金」という生存戦略についてお届けしました。
平野氏と中山氏が共通して伝えたのは、「誰を同じバスに乗せ、どのような覚悟で事業を育てるか」という本質的な問いでした。外部資本を入れることの重みを理解し、最適なパートナーと共に、自分たちだけの「正解」を見つけていく。本セッションが、挑戦を続ける皆様の糧となれば幸いです。
執筆:WORK PARK 編集部
