「スタートアップに興味はあるけれど、自分にも投資することが出来るのか?」「未上場株式は、どのようなリスクがあるの?」そんな疑問に応えるべく、金融歴40年の平野清久氏を講師に迎えた勉強会を開催しました。
今回は、大和企業投資の元代表取締役社長であり、経産省のスタートアップ投資契約ガイドライン作りにも携わった「投資実務のプロ」平野さんの言葉から、エンジェル投資をする上で知っておきたい実務知識を全4回に渡ってお届けします!
第1回は、スタートアップの定義と「バーンレート」の考え方です。
登壇者
1987年より2004年まで大和証券グループにて証券アナリストとして小型成長企業の調査に従事。数多くのIPO企業、上場企業の調査を行い、各種証券アナリストランキングでは10年以上にわたり上位にランクされる。2004年より同証券グループの投資銀行部門にて引き続き小型成長企業を担当し、IPO準備企業のサポート、当時のマザーズ・JASDAQ等上場企業の財務活動の支援を行う。2010年大和クオンタムキャピタル代表取締役社長に就任。アジア圏にてグロース投資を行うファンドの運営に関わる。2014年から大和企業投資にて国内ベンチャー企業への投資を担当。2020年同社代表取締役社長に就任。2024年3月まで4年間社長として同社経営に携わる。
投資の前に整理したい「スタートアップ」の定義
投資の話を始める前に、まず整理しておきたいのが「スタートアップ」の定義です。平野さんは、スタートアップという言葉に明確な定義は無いとしつつも、単なる「新しい会社」ではなく、「イノベーションによって短期間で急成長を目指す組織」であると定義しています。
さらにスタートアップには、いくつかのタイプがあることにも触れています。例えば法人向けにSaaS型のITサービス企業は、サブスクリプションモデルなので積み上げ型の成長が期待できるとし、個人向けのサービスは課金が難しいなどのハードルをクリアすれば、爆発的なヒットも可能だと話しています。
最近、注目されている宇宙、ロボット、エネルギー、AIなどのディープテック領域の場合、開発に多額の資金と時間がかかりますが、成功したときの社会的インパクトの大きさが魅力だとしています。
さらにスタートアップと言っても、幾つかのステージがあるとも。会社を作った時点のシード期から事業の進捗によってアーリー、ミドル、レイトと進んで行きます。事業だけでなく組織面でも役職員の数が増えることで運営方法などが変わってくることも重要としています。
投資家は、その会社がどのステージ(創業期の「シード」から、上場間近の「レイト」まで)にいるかを見極め、それぞれの成長段階に合わせた支援を行っていきます。
ステージ別スタートアップファイナンス
次にスタートアップのファイナンスについて具体的な話に移りました。まずファイナンスにおいてもスタートアップのステージによって金額や投資家、資金使途が異なってくると示しています。
スタートアップファイナンスの特徴
スタートアップファイナンスの特徴を幾つかあげています。まず少数による閉ざされた世界であるとしています。これは金融証券取引法では「私募取引」という取引になります。
それから複数回(各回をラウンドという)にわたって調達することを前提としていることとともに、独特の契約がいろいろと存在することが大きな特徴だとしています。
スタートアップファイナンスで最初に考えること
最初の一歩としてあげたのはシンプルにいくら必要なのか、そしてその次はどうやって集めるかでした。
理想的にはいくら必要か
いくら必要かを考えるうえで理想は、事業が黒字化し追加で資金調達をしなくてもよくなる金額であるとしています。ただ、そこには問題があるとも言います。それだけ多くのお金を集めることが難しいうえ、株式を発行するのであれば投資家に対して多くのシェア(持株比率)を渡さないといけないからです。
そしてそもそも論として、ほとんどのスタートアップは計画通りに黒字にならないことが最も重要なポイントであると指摘しています。
現実的には調達額をどう考えるか
理想通りにはいかないなかで、現実的な考えを説明しました。段階的に資金を集めることを前提に一度にどれだけ集めるかを考えるとしています。
スタートアップでは会社運営に1ヵ月いくら必要かを考え、その〇ヵ月分を集めるということが基本だと言います。この1か月に必要な資金を、お札を燃やすという意味から「バーンレート」と言います。
そして理想的には2年分(24か月)、少なくとも1年分(12か月)を集める必要があると言います。これは次の資金調達に6か月から12か月必要なため、事業に専念する期間を確保するためです。
他に許認可をとるために必要な資本金であるとか、工場や生産設備を作るために必要な資金、開発を完了して事業を次のステップに進めるために必要な金額という考えもあると話しています。
第1回のレポートはここまでです!平野さん、貴重なお話をありがとうございました。
初心者の視点に立ちつつも、40年のキャリアに裏打ちされた平野さんの言葉は、投資の「リアル」を浮き彫りにするとともに、実務の奥深さを改めて実感しました。
全4回でお届けしている本レポート、次回は出資と借入の違いや投資家タイプ、そしてバリュエーションの考え方と、期待リターンの構造についてお届けします。
執筆:WORK PARK 編集部
