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【イベントレポート】ゼロから学ぶエンジェル投資(投資家目線)

2025年12月、これからエンジェル投資をしたいと考えている方に向けて「ゼロから学ぶエンジェル投資」と題した投資家の対談セッションを開催しました。

エンジェル投資家は何を見て、なぜ投資するのか。スタートアップ初期の成功を左右する資金提供者と起業家のミスマッチを減らし、エコシステム全体の活性化を目指す本イベントのレポートをお届けします。

イベント画像

登壇者

漆原 茂 氏 ULSコンサルティング株式会社 取締役会長

上場企業を経営しつつ、毎晩コードを書きながら寝落ちするエンジニア。大規模アーキテクチャやクラウド設計、生成AI、超高速処理が大好き。東京大学工学部卒、1989年より2年間スタンフォード大学コンピュータシステム研究所客員研究員。2000年にウルシステムズ(現ULSコンサルティング)を創業、2006年に上場。現在、上場企業のULSグループを含め複数社の取締役。独立行政法人情報処理推進機構の未踏アドバンストプロジェクトマネージャー、一般社団法人Generative AI Japanの設立発起理事も務める。先端技術とスタートアップを心から敬愛している。

橋田 一秀 氏 OASIS FUND 代表パートナー

1983年東京生まれ。2002年海城高校卒業。2007年東京理科大学卒業。NTTデータ、うるるでの勤務を経て、2014年ペライチを創業し代表取締役に就任。2023年4月全役職を退任。2022年から2024年までエンジェル投資家として活動。77社投資実行。2024年4月 スタートアップ関係者が無料で利用できる コミュニティスペース SHIBUYA STARTUP OASIS を開業。2024年12月 創業者が支えるシードVC OASIS FUNDを設立。

モデレーター

冨田 阿里 氏 株式会社WORKPARK 代表取締役

神戸大学卒業後、インテリジェンスで採用支援に従事。セールスフォース・ドットコムではスタートアップ戦略部を立ち上げ、2019年にスマートラウンド入社、取締役を務める。社会課題とビジネスをつなぐ新たな仕組みづくりを目指し、株式会社WORKPARKを創業、代表取締役に就任。2025年、名古屋市客員起業家に就任。

最初の一歩を支えるお金と人のリアル

冨田阿里(以下、冨田):みなさん、本日はお集まりいただきありがとうございます。2025年12月、これからエンジェル投資を始めたい方向けに「ゼロから学ぶエンジェル投資」というテーマでセッションをお届けします。

私はこれまで10年ほどスタートアップ支援に携わってきましたが、エンジェル投資家の方々というのは、起業家にとって「何もない状態から応援してくれる、本当に大きな存在」だと感じています。ただ、一方で初めて起業する方にとっては、そもそもどこで出会えばいいのかわからなかったり、残念ながらミスマッチが起きてしまったりという現状もあります。

今日は、起業家、経営者であり、エンジェル投資家としても豊富なご経験をお持ちであるお二人に、その「リアル」を語っていただこうと思います。まずは自己紹介を兼ねて、なぜ数あるお金の使い道の中からエンジェル投資を選んだのか、そのきっかけから伺えますか?

なぜ「エンジェル投資」という道を選んだのか

橋田一秀 氏(以下、橋田氏):よろしくお願いします。僕はもともとスタートアップが大好きで、自分の会社(ペライチ)を売却する前から投資を始めていました。

きっかけはコロナ禍ですね。リモートワークが増えて夜の時間がぽっかり空いたとき、後輩たちの相談に乗るようになったんです。週に1〜2回、趣味のような感覚で話を聞いていたんですが、いろんな事業の話を聞くのがとにかく知的好奇心を刺激されて楽しかった。純粋に「起業家を心底応援したい」という気持ちが強くて、気づけばこれまで77社に投資していました。

漆原 茂 氏(以下、漆原氏):僕の場合は、20年くらい前に東京大学への寄付から始まったんです。そこから、学生が事業を立ち上げるときの資金として30万円、50万円と出すようになったのが「エンジェル」としてのスタートですね。個別の会社にしっかり投資し始めたのは15年ほど前からです。

僕がエンジェルとして大事にしている役割の一つに「起業家の絶対的な味方になる」というのがあります。VC(ベンチャーキャピタル)と起業家の意見が衝突したとき、100%起業家の側に立ってサポートする。

そもそも、エンジェル投資家なんて「頭がおかしい」人が多いんですよ。(会場笑)だって、ゼロを0.1にするという、最も困難でリスクの高い初期段階に価値を見出すわけですから。0.1を1にするのも、1を100にするのも大事ですが、ゼロを0.1に転じさせるエネルギーはとてつもない。そこに立ち会いたいんです。

対談の様子

三度断られても「出資してほしい」と願った理由

冨田:実はお二人、投資家と投資先(ペライチ)という関係でもありますよね。当時のエピソードをお聞かせいただけますか。

橋田氏:そうなんです。漆原さんとはペライチの既存株主からの紹介でした。最初は「株式なんか渡さなくていい。困ったら手伝うから」と言われてしまって……。

漆原氏:そうそう。何度も相談に乗る中で「これは本当に良いチームだな」と確信はしていたんです。でも、当時の彼らに無理に株を渡させる必要はないなと思って「株は売るなよ」という投資の基本を伝えつつ、三回くらいお断りしたんですよ。

橋田氏:それでも僕は、どうしても漆原さんに投資してほしかった。四度目、IVS神戸でお会いしたときに改めてお願いして、ようやく……。

漆原氏:そこまで言うなら、もう「チームの一員として責任を持つ」という意味で、出資という形を取らせてもらおうと。単なるお金のやり取りではなく、伴走する覚悟を決めた瞬間でしたね。

漆原さんと橋田さん画像1

投資判断は「事業計画」より「人」と「腹落ち」

冨田:参加者の方から一番多かった質問が「どうやって投資判断をしているのか」という点です。漆原さん、いかがですか?

漆原氏:シード期の会社において、事業計画書や出口戦略なんて、正直あまり意味をなしません。それよりも圧倒的に「起業家の人柄」です。必ず一度は食事に行って、じっくり話をして、その人の本質を知るようにしています。あとはチームを見ています。

橋田氏:僕も究極的には「この人になら、タダでお金をあげても後悔しない」と思えるかどうかに絞っています。全損しても「あの人を応援できたならいいや」と思える相手。

エンジェル投資のスピード感としては、30分の面談で判断して、1週間以内に返事をしていました。これまで面談した方の4分の1くらいに投資してきましたが、最後は言語化しきれない「腹落ち」があるかどうかですね。

冨田:逆に「お断りする基準」はありますか?

橋田氏:僕自身、起業家時代に投資家に断られる辛さを知っているので、お断りするのは本当に心苦しいです。ただ、やはり自分の中で「腹落ち」しなかった場合はお伝えします。でも、一度お断りした後に改めてお会いして、出資に至ったケースも2件ほどありますね。

漆原氏:僕は「人」だけだと投資しづらいですね。あくまで「チーム」に投資したい。起業家の言う事業計画なんて、10年も経てば世の中が変わって通用しなくなりますから。

具体的にお断りするのは、まず「僕である必然性がない(単にお金だけ欲しいと言われた)」場合。それから「人の話を全く聞かない人」。相手が何を言っても聞く耳を持たず、かつその事業領域への深掘りが甘いと感じた場合は、お引き受けしません。お話を伺っても、7〜8割の方はお断りしているのが現状です。

「お金が返ってこないこと」は後悔しない

冨田:投資して後悔したことや、辛かった経験はありますか?

橋田氏:幸いなことに、今のところ「しなければよかった」という案件はありません。ただ、土壇場で人間性が出るものなので、今後もしかしたら不義理をされることもあるのかもしれませんが、今は一件もないですね。

漆原氏:僕も、会社が潰れたりお金が返ってこなかったりしたことはありますが、それ自体は全く後悔していません。

一番辛いのは、起業家が「やった感」だけを出して、困っていることを正直に話してくれなくなった時です。エンジェル投資家って、別に偉そうに話を聞きたいわけじゃない。頼られたいし、思ったことはストレートに伝えたいんです。それを無視されて、情報の透明性がなくなってしまうのが一番悲しいですね。

橋田氏:僕は、漆原さんのような、経営の勘所がわかっている方に投資いただけて本当に助かりました。印象的だったのは、日本のAWSサーバーが落ちたとき、漆原さんから「これは予期できたことじゃないか!」と連絡が来たこと(汗)。

漆原氏:あの時は愛情ゆえに厳しく言いました(笑)。当時すでにペライチには数万人のユーザーがいて、それだけ期待されていた。だからこそ「ここで甘くしちゃいけない」という思いで連絡したんです。

エンジェル投資のリターンと「お金以外の価値」

冨田:ぶっちゃけ、リターンってどうなっているんででしょうか……?

橋田氏:僕は投資して1〜3年の会社がほとんどなので、まだ回収は始まっていない状況です。内訳としては、約6割が現状維持、1割がクローズ。先月ようやく、シード調達後にM&Aされた1社から2倍のリターンが出たところです。

漆原氏:僕は累計30社ほどですが、上場や売却をした先も複数ありますし、増資して頑張っている先も多い。トータルでは十分プラスのリターンが出ています。ただ、リターン目的でやっているわけではないので、これからもそこだけを追うことはしません。起業家は本当に偉いし、素晴らしい。それだけで十分なんです。

漆原さんと橋田さん画像2

参考資料:

会場からの質問で、契約の雛形や一般的な注意点を教えてほしいというお声がありました。


次回イベントのご案内

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執筆:WORK PARK 編集部

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